京都伝統工芸 金網細工
金網 辻

 

 起源が平安時代にまでさかのぼると云われる、「京金網」は京都の伝統工芸品において、「普段使い」への高いこだわりが求められるもののひとつ。 その中でも、丈夫で本当の意味で使いやすい普段使いを考え商品を提案し続けているのが、「金網つじ」です。 「手編み・網 の加工・曲げ」と3つのワークスタイルから作られる商品は、使いやすさもさることながら、「見た目の美しさ」にも重きを置いています。 例えば湯豆腐をいただくときに使う『とうふすくい』。一人用の小さい網の真ん中を見ると、寸分たがわず編み込まれた菊の文様が施されています。これが金網 つじの代表的な技法『菊出し』。美しい京料理にそっと美しい『華』をそえるこの品は、ひとつひとつを大切に作りあげる手編みならではの醍醐味。京の名だた る老舗が愛用するのも納得です。 現代のライフスタイルに溶け込む商品を提案しながらも、あくまで『使いやすさと美しさ』にこだわり抜く。長年続く職人の技術は、お客様に愛され続けています。

      二代目 辻 徹 さん

 

 金網つじの二代目、辻徹さんは、まだ子供の頃、バブル経済でよその金網屋の多くが、自ら世の中に売り込む姿を目の当たりにしてきた。ところが創業者で父の 賢一さんは、以前と変わらず職人からの注文にこだわったまま。いつも経済的に困っている様子の両親に、「なんやねん、こいつら」とうんざりしていたと言い ます。しかし、二代目として家業に携わって13年経った今、当時の父親の気持ちが分かるようになったと言います。「正直、楽をして儲けようと思ったら、いくらでもできる。今なら中国などで作ってもらえばいいわけですから。でもそれはできない。なぜなら、次の代がいるから」。バブルの流れに乗れば簡単だった時代にあえて我を通し、お金にならない道を選んだ初代。そういう時期を経験したからこそ、金網つじにはよそに負けないと自負できる高い技術、つまりこの先もやり続けるための力が、二代目へと受け継がれているのである。「物を全ての部分で合わせ込む」という考え。海外展開などでは特に顕著だが、現地の生活様式や食文化を自分の目でしっかりと確かめ、理解した上で、必要とされる道具を金網で展開するということ。つまり使い手の生活にこっそりと忍び込もうというのだ。

「僕らの道具は使ってもらってなんぼ。だから人を知ら ないと、国を知らないと、物は作れない」。京都人の美意識が、静かにだが、確かな存在感を持ってそこに潜むことに気付くはずだ。「親父はこれを『脇役の品格』と言います。どんな小物であってもきちっとした物を作る。それが 僕らの創作理念なんです」。